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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2014年6月10日

第141回関西に建つ大規模マンションの6割超は長谷工が施工?

 雑誌『SUUMO関西─新築マンション』5月13日号に掲載された、「これから販売予定のマンション特集」をパラパラめくって驚いた。長谷工コーポレーションの名前が異常に目立つのである。気になって、200戸以上の大規模マンションだけに絞って数えると、掲載された10物件のうち実に7物件の施工者が長谷工だった。

 一。ザ・レジデンス東三国 304戸

   京阪電鉄不動産ほか

 二。OMPタワー 565戸

   名鉄不動産ほか

 三。ブランズシティあべの王子町 318戸

   東急不動産

 四。ブランズタワー・ウェリス心斎橋NORTH 246戸

   東急不動産ほか

 五。OSAKA745駅前大規模プロジェクト1期 745戸

   住友不動産ほか

 六。ザ・ミリカシティ ミリカテラス 651戸

   大京ほか

 七。メイツブラン長岡京 217戸

   名鉄不動産ほか

 10物件のうち7物件なのでシェアは70パーセント。そもそも長谷工の施工戸数シェアはこんなに圧倒的だったろうか?

 きちんとした数字を確かめるため、同社の「決算説明資料」(5月14日付)に当たると、首都圏や近畿圏ごとに民間分譲マンションの施工戸数シェアと受注高が掲載されていた。

 【近畿圏】

  ■長谷工の施工戸数シェア推移

   2012年度─23.5パーセント

          規模200戸以上だと34.1パーセント

   2013年度─19.8パーセント

          規模200戸以上だと29.9パーセント

  ■長谷工の受注高推移

   2013年3月期─583億円

   2014年3月期─937億円

 近畿圏において、同社の施工戸数シェアは20パーセント前後だが、200戸以上に限ると30パーセント台前半に跳ね上がる。また、2014年3月期の受注高は、前年比60.7パーセント比と絶好調なので、施工戸数シェアは急増したはずである。要するに、『SUUMO関西』に掲載されていた、10件のうち7件という数字は不思議でなかったのである。

 200戸以上の大規模マンションに限ると、2014年度の施工戸数シェアは50パーセント台後半から60パーセント台に達するのではないか。

 

 念のために首都圏の数字も調べておこう。

 【首都圏】

  ■長谷工の施工戸数シェア推移

   2012年度─26.2パーセント

          規模200戸以上だと39.5パーセント

   2013年度─24.3パーセント

          規模200戸以上だと31.0パーセント

  ■長谷工の受注高推移

   2013年3月期─2141億円

   2014年3月期─2509億円

 首都圏において、同社の施工戸数シェアは25パーセント前後だが、200戸以上に限ると30パーセント台に跳ね上がる。ただ、2014年3月期の受注高は、前年比17.2パーセント増なので、施工戸数のシェア増は近畿圏に比べて穏やかなペースに止まると予想される。それでも40パーセント台には届くのではないか。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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