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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2015年8月11日

第184回「一般住戸81戸」vs「横浜市民優先住戸103戸」

 今年の6月から7月にかけて、珍しい販売手法を採用した分譲マンションが目立った。まずマンション住戸の種類を整理しておこう。

 一 権利者住戸

 市街地再開発事業の場合には、権利者(土地所有者、建物所有者など)は原則として、権利金額と等価分のマンション住戸(権利床)を取得できる。

 二 事業協力者住戸

 不動産会社と土地所有者が共同で事業を行うとき、土地所有者は分譲優先価格(一般の分譲価格から販売経費や事業主利益を差し引いた価格)で、マンション住戸を取得できる。

 三 「友の会会員」優先住戸

 不動産会社が常時「友の会会員」を募集している場合には、その既存会員は優先的に情報の提供を受けることにより、特定の住戸(優先住戸)を取得できる。

 四 地元民優先住戸

 不動産会社が開発許可や建築確認を受ける際に、地方公共団体(市町村等)から地元民に対する優先分譲枠の設定を求められた場合に発生する。地元民は不動産会社が用意した特定の住戸(優先住戸)を取得できる。

 五 「○○マンション友の会会員」優先住戸──これはダメ

 不動産会社が最初の販売広告で、「○○マンション友の会会員」を募集。その会員は優先的に情報の提供を受けることにより、特定の住戸(優先住戸)を取得できる方法。しかし不動産業界の自主機関である「公益社団法人・首都圏不動産公正取引協議会」は、これを優先住戸と呼ぶことを認めていない。それはマンションを購入したいと思う人全員が会員登録をする結果、優先的に取得することが不可能になるため。要するに、実際問題として、優先住戸が存在しないのである。

 このうち四「地元民優先住戸」の扱いで対照的だったのが、横浜市のみなとみらい地区で販売された2棟のマンションである。

 東急不動産「ブランズタワーみなとみらい」(地上29階、全228戸、みなとみらい線みなとみらい駅から徒歩2分)の販売では、横浜市民優先住戸は存在しなかった。

 一方、近鉄不動産と三井不動産レジデンシャル「ブルーハーバータワーみなとみらい」(地上27階、全355戸、みなとみらい線新高島駅から徒歩8分)の第1期販売では、一般住戸が81戸に対して、横浜市民優先住戸が103戸と多数を占めた。こういうケースも珍しい

 写真右側の棟が「ブルーハーバータワーみなとみらい」。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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