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「斜め45度」の視点

2014年12月16日

第161回SUUMO研究(下)Yahoo!不動産で即座に検索

 「年収400万円の僕に買える4LDK?」を探すため、SUUMOを検索したが、余計な物件がヒットするため、探している物件になかなかたどり着くことができない。それでは「Yahoo!不動産」ならどうだろう。

 「東京都、新築マンション、4000万円未満、4LDK、80平米以上」という条件で検索すると、今回は5物件がヒットした。

 ただし、ざっとチェックすると、5物件のうち3物件は同一マンションを重複してカウントしているなどの事情があった。最終的に該当する物件はフージャースコーポレーションが分譲している「デュオヒルズ府中多摩川」だけと思われる。

 この物件は4LDK、80平米以上、3698万円と予算の枠内に収まっている。ただし、敷地が東京都府中市四谷5丁目にある、いわゆる「バス便」マンションである。

 交通の便を調べると、次のように表記されている。

 一。京王線聖蹟桜ケ丘駅バス7分。府中四谷橋北バス停から徒歩6分。

 二。京王線中河原駅から徒歩24分。

 三。中央本線国立駅バス17分。府中四谷橋北バス停から徒歩6分。

 四。京王線中河原駅バス7分。デュオヒルズ前バス停から徒歩1分。

 五。南武線西府駅徒歩26分。

 バスに乗った場合はまだしも、歩き通そうとすると中河原駅から徒歩24分、西府駅から徒歩26分とかなり遠い。よって、この土地に愛着があったり、近い場所に職場がある人に向いている。しかし、それ以外の人から相談されたとしたら、「十分考えた方がいいですよ」と説明する。

 さて、上図の広告に誘われて、「年収400万円の僕に買える4LDK?」を探した結果、該当する物件がわずか1件という現実に直面すると、「不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSS)」に少し注文を付けたくなってくる。

 【RSSの設立趣旨】

 インターネットサイト上での不動産広告は、不動産会社にとっては、効率的かつ効果的な成約促進手段として活用されており、また一般消費者にとっては、自らが希望する不動産を効率的かつ効果的に探索する手段として支持されています。

 ところが、インターネットサイト上で広告されている内容に虚偽等の不当なものが混在していたり、不動産公正取引協議会が定める「不動産の表示に関する公正競争規約」に反する表示が行われていては、広告主である不動産会社の信用が失われてしまうばかりか、その不動産情報サイト自体はもちろん、不動産情報を発信しているすべてのサイトの信用失墜にまで発展しかねません。

 不動産情報サイトを運営する事業者は、こうした事態を防止することを目的に、不動産情報を適正かつ公正に不動産会社から一般消費者に伝達するために、不動産情報サイト事業者自らがルールを策定し、それを遵守していくこととしました──。

 RSSには7社が加入する。そのうち「SUUMO」を運営するリクルート住まいカンパニー、「HOME'S」を運営するネクスト、「at-home」を運営するアットホームの3社が理事会社になっている。

 それにもかかわらず、「SUUMO」の広告は、RSSが宣言した「自らが希望する不動産を効率的かつ効果的に探索する手段」という趣旨の枠外にはみ出して、「ゴールが不在」だったり、「ゴールが遠すぎて容易にはたどり着けなかったり」した。

 一方、「Yahoo!不動産」と専属販売契約を結んで、新築マンションの掲載を取り扱っているクラシファイド社は、RSSには加入していない。けれども、すでに説明したように、ゴールにすぐにたどり着けた。これでは真逆ではないか。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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