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2013年7月16日

第109回東洋経済「マンション時限爆弾」特集

 週刊東洋経済6月8日号が「マンション時限爆弾」特集を組んだ。

 「多くのマンションで、管理組合の役員のなり手不足が深刻化しているが、引き受けない最大の理由が『高齢のため』である。管理組合が機能不全となると、管理費や修繕積立金の滞納につながりやすい。今も4割のマンションで管理費の滞納が発生している。そんな環境に嫌気が差して、住民が次々と去り、賃貸化、空室化が進んだ果てには、廊下にゴミがあふれて照明もつかない『スラム化』が待ち受ける──。老朽化したマンションはタイマーがオンになった『時限爆弾』のような存在だ」

 特集は4部構成。

 (1)ほぼ無理な建て替え。

 (2)資産価値を決める大規模修繕。

 (3)揺れる管理組合。

 (4)とびきりの難物、タワーマンション。

    修繕費用はケタ外れ。意識差も課題に。タワマンの実情。

    タワマンは難題山積だ。問題点と解決に挑む管理実例。

 特集のうち、1部から3部までは、いわば「毎度おなじみ」の内容だが、4部のタワーマンションについては、知らない人も多かったのではないか。

 この特集を読んで思いだしたのが、日経BP社「Safety Japan」に、「超高層マンションの長所と短所(前編・中編・後編)」と題して、2009年11月から12月に掲載したコラムである。要約する。

 超高層マンションには、大きく5つの長所がある。

 (1)値崩れしにくい。

 (2)眺望、採光、通風がいい。

 (3)セキュリティ・レベルが向上した。

 (4)共用施設や設備が充実している。

 (5)地域のシンボル的存在で、ステータス感がある

 反面、超高層マンションには、大きく7つの短所がある。

 (1)エレベーターに頼るための「行動の制約」。

 (2)高層生活のストレスがもたらす「心理的、生理的な影響」。

 (3)高層かつ高密度の住環境に伴う「事故と犯罪」。

 (4)災害時に「高層難民」になる心配。

 (5)「補修費用が高額」になる事実。

 (6)「経済格差」に伴う管理組合の苦労。

 (7)周辺環境への「悪い影響」。

 この長所と短所を総合的に勘案して、私は次のような「超高層マンション観」を抱いている。

 家族の年齢構成、心身面の強さ、家計の状態などを総合的に判断して、「経済的にも心理的にもタフ」であるのなら問題ない。しかし、心配な要因があるのなら、超高層マンションに住み続けるどうかについて、真剣に検討しなければならない──。

 東洋経済「マンション時限爆弾」特集を読んで、私のマンション観は正しいと改めて確信した。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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