リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2010年2月22日

第15回 「顧客重視」新方式への期待

 「オーダーメイド(自由設計)方式」および「スケルトン・インフィル(SI)方式」の分譲マンションで、実績ナンバーワンを誇る野村不動産が、新たに「スケルトン・オーダーメイド方式」を開発した。

 「自由設計方式」とは、購入者が、住戸のプラン、内装、設備を自由に注文できる方式で、住戸ごとに設計者が付いて対応する。

 「SI方式」とは、建物のスケルトン(柱、梁、壁、床などの構造躯体)とインフィル(住戸のプラン、内装、設備)を、分離して作る方式。長持ちするし、リフォームしやすい長所がある。

 自由設計マンションの場合、作業は次のような段取りで進んでいく。
(1)マンション売買契約
(2)担当設計者の決定
(3)インフィル(住戸のプラン、内装、設備)設計の打ち合わせ
(4)設計完了
(5)インフィル工事契約
(6)インフィル工事開始
(7)インフィル工事完了
(8)完了検査、引き渡し

 このうち、「(3)インフィル設計の打ち合わせ」は、従来であれば、マンション工事の作業工程とは関係なく行われるケースが一般的だった。それに対して、野村不動産が新たに開発した「スケルトン・オーダーメイド方式」では、顧客と対応するため、作業工程を組み替えるとともに、内覧期間も設ける。おおむね、次のような進行になる。

(1)マンション着工
(2)共有部分をほぼ完成させる。専有部はスケルトン状態に仕上げる
(3)内覧期間を設けて、顧客に対応
(4)各住戸のインフィル設計
(5)各住戸のインフィル工事、共有部分の残工事

 すなわち、外観や共有部分をほぼ完成させ、専有部についてはスケルトン状態に仕上げた段階で、一定期間の内覧期間を設けて、顧客に対応する仕組みである。

 これにより、顧客は、自分の目で、建物全体の外観や共有部だけではなく、希望住戸の空間をも確認できるので、リアリティのあるインフィル設計を進めることが可能になる。

 「スケルトン・オーダーメイド方式」適用の第一弾は、東京・港区のパキスタン大使館跡地で建設している、分譲マンション「プラウド元麻布」(32戸)。4月末までに、顧客との打合せ、契約を完了させていく方針である。

 「長寿命マンション」を実現するためには、マンションはSI方式でなければならない。また、顧客の多様なニーズに応えるためにも、マンションは可能な限り自由設計方式にするべきである。

 野村不動産が開発した「顧客重視」の新方式が、市場で評価されることを期待したい。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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