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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2015年9月8日

第186回真夏日や猛暑日のマンション販売

 8月下旬になるとかなり落ち着いたが、今年の夏は異常に暑かったため、真夏日と猛暑日の定義をしっかり覚えることができた。最高気温が摂氏30度以上になると真夏日といわれ、35度以上になると猛暑日といわれる。

 私はマンションの取材に行くと、まず建物の敷地を東西南北の4方向からグルリと眺める。その次に敷地周辺を歩き回ったり、最寄り駅が3駅あるとそのすべてをチェックしたりする。よって、季節がいいときには、2時間くらいかけて歩くことも少なくない。

 しかし気温がぐんぐん上昇して、真夏日になったり猛暑日になったりすると周辺調査を一気に省略して、必要最低限に抑えてしまう。ということで、気になったのは、「真夏日や猛暑日とマンション販売」の関係である。

 猛暑が続いていた8月10日月曜日の昼下がりに、東京都江東区にある野村不動産「プラウドタワー木場公園」のマンションギャラリーを訪ねた。

 最寄りの東京メトロ東西線木場駅から、三ツ目通りを7分歩いてマンションの建設現場に着く頃にはすでに汗だくだく。そのため敷地の北側と西側にある木場親水公園はわずか5分でチェックを終了した。また三ツ目通りを渡った東側にある木場公園は、すでに何回か歩いたことがあるので、チェックは省略。これではまさに夏バテ取材そのものである。

 建設現場から、さらに8分歩いて、マンションギャラリーに到着した。ただし時間はまだ13時なのに、取材のアポは14時から。要するに現場取材を省略しすぎたために、時間が余ってしまったのである。どこか涼しい場所はないかと探すと、都合のいいことに、マンションギャラリーのすぐそばに手頃なカフェがあったので、迷うことなく飛び込んだ。

 カフェで涼しい時間を過ごした後、約束の5分前にマンションギャラリーを訪ねて、販売担当者に質問した。「夏の暑い時期に販売活動をして、効果はあるものですか?」。

 するとこんな答が返ってきた。「マンションギャラリーは予約制なのですが、すでに予約が一杯で、順番待ちの状態です。ギャラリーの内部は涼しいので、何の問題もありません」。なるほど、そんなものなのか。

 ただし、話には先がある。自宅に戻ってから、「プラウドタワー木場公園」のホームページを眺めると、こんなメッセージが載っていた。

 「誠に勝手ながら8月11日(火)から8月20日(木)まで夏季休業とさせていただきます」。なるほど、暑い時期には思い切って休業するからこそ、営業日が賑わうのかもしれない。

 

 「プラウドタワー木場公園」の完成予想パース

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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