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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2021年2月16日

第370回 【特別コラム】週刊東洋経済「まさかのコロナ特需」特集、そして再度の「緊急事態宣言」

 2021年1月12日に発売された『週刊東洋経済1月16日号』の表紙には、次のようなキャッチコピーが並んでいました。

 「激動──マンション・住宅」

  ◇都心から郊外へ、民族大移動は起きるのか
  ◇徹底検証、都心vs郊外
  ◇誰も予想しなかった「コロナ特需」、いま注目されるエリアと駅は
  ◇首都圏・近畿圏・中京圏、マンション騰落率ランキング
  ◇不動産投資の最新事情

 この中で最も気になるのは、「誰も予想しなかったコロナ特需」という言葉です。私は仕事柄、このキャッチコピーに鋭く反応、即座に購入しました。

 特集は「導入部」および「パート1〜パート3」で構成されています。


『週刊東洋経済1月16日号』の表紙

【■■】記事の導入部──まさかの「コロナ特需」

 ──「今日もヘトヘトです。予約がひっきりなしに入っていて、残業をしながら接客しています」。都内で新築マンションを販売する営業員は、疲れながらも満足げな表情を見せる。

 この状況を誰が予想できただろうか。緊急事態宣言発出前後の2020年4月、住宅の販売が困難な状況に追い込まれた。

 ところが、営業を本格的に再開した7月以降、販売がV字回復を果たしたのだ。

 2020年11月に、三井不動産レジデンシャルが発売したタワーマンション「パークタワー勝どき」は、販売237戸に対して約650件もの申し込みが入った。

 コロナ禍は雇用や所得を蝕んでいるが、ITを筆頭に所得が高く在宅勤務への移行も高い業種の従事者によって特需が支えられている──。

 記事には4枚の図表も添えられています。

  ①「巣ごもり」開始で住居に不満
  ②在庫少なく、売り手優位に
  ③価格上昇で購買層が限定される
  ④低金利でローンも組みやすい

 4枚の図表には、かなりの説得力があります。


『週刊東洋経済1月16日号』の目次

【■■】記事パート1──「都心vs郊外」 

  ⓐ郊外への関心が高まるが・・・
   民族大移動は起こるのか
   コロナ禍で住宅購入を検討している人の「実像」はいかに?

  ⓑ活況の裏に「マンション転売ヤ−」の存在
   取引が増えた駅、減った駅
   資産性重視の潮流が加速、実需と投資の線引きが薄れつつある

 なお「転売ヤ−」とは、「商品を転売する人」「転売で一儲けしようと目論む輩」という意味で用いられる俗な言葉です。

  ⓒファイナンシャルプランナーが検証
   都心と郊外の「現実的な比較」

  ⓓ住宅トップに直撃、ニューノーマル時代の住まいとは?
   「広さ重視の潮流は続く」(野村不動産・宮嶋誠一社長)
   「1億円の高額住宅も販売好調だ」(積水ハウス・仲井嘉浩社長)

【■■】記事パート2──「販売最前線」

  ⓐ住宅業界を覆う「新常態(ニューノーマル)」
   コロナ禍の下で格闘する物件開発や販売現場の動きを追う

   ◇住宅販売のリアル(マンション編)
    在宅需要取り込みに苦心

   ◇住宅販売のリアル(戸建て編)
    あの手この手の総力戦

  ⓑ中古マンション選びの勘所
   ⓒ重要度が増す「防災」意識
   ⓓ住宅ローンを使いこなす

【■■】記事パート3──「不動産投資」

  ⓐ忍び寄る空室増加の影
   売買は堅調、家賃は軟調
   「賃貸住宅は不況に強い」という常識はコロナ禍でも通じるか

   ◇レオパレス21再建のカギ握る
    ビレッジハウスの正体

   ◇サブリース襲う「2025年問題」
    業界健全化の裏で迫る賃料減額の足音

【■■】データ──マンション・駅「値上がり・値下がりランキング」

   ◇新築時と直近(騰落率ランキング)
    首都圏「値上がり物件トップ50」「値下がり物件ワースト10」
    近畿圏「値上がり物件トップ30」
    中京圏「値上がり物件トップ10」

   ◇コロナ禍の前と後(騰落率ランキング)
    首都圏「値上がり物件トップ30」「値下がり物件ワースト10」
    近畿圏「値上がり物件トップ30」
    中京圏「値上がり物件トップ10」

   ◇駅別・新築時と直近(騰落率ランキング)
    首都圏「値上がり駅トップ30」「値下がり駅ワースト10」
    近畿圏「値上がり駅トップ30」
    中京圏「値上がり駅トップ10」

【■■】私の読後感

 緊急事態宣言が発出された前後の2020年4月、新築マンションの販売が困難な状況に追い込まれました。ところが、営業を本格的に再開した7月以降、販売がV字回復を果たしていたのです・・・。

 それをつぶさに伝えた、2021年1月12日発行の『週刊東洋経済1月16日号、激動──マンション・住宅特集』は、実に読み応えがありました。

 しかし、『週刊東洋経済』の特集と相前後するかのように、2021年1月8日〜2月7日まで、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県に、緊急事態宣言が再び発出されました。

 さらに、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県にも、1月14日〜2月7日まで、緊急事態宣言が発出されました。

 この2回目の緊急事態宣言によって、「まさかのコロナ特需」はどのような影響を受けることになるのでしょうか。私としては『週刊東洋経済』の続報に、大いに期待したいと思います。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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