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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2019年9月3日

第324回 不動産ポータルサイトの「2018年版マンション人気ランキング」採点(上編)

 私は取材の対象にする新築分譲マンションを決めるとき、デベロッパー各社から送られてくる「ニュースリリース」や、不動産ポータルサイトに掲載される「新築分譲マンション人気ランキング」などを1つの手がかりにしている。

 今回はまず、各不動産ポータルサイトの「2018年版・新築分譲マンション人気ランキング」の出来栄えを、採点してみよう。

 ミシュランガイドは、「3つ星★★★」「2つ星★★」「1つ星★」方式になっている。それに準じて、「3つ星★★★」を最高点とした。


 これは5種類の不動産ポータルサイト、すなわち「at home」「LIFULL HOME'S」「MAJOR7」「Yahoo!不動産」「SUUMO」を対象に、「新築分譲マンション人気ランキング」の出来栄えを採点した表である。

 なお「MAJOR7(メジャーセブン)」とは、マンション大手7社──住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス(50音順)──が共同で運営する新築マンション検索サイトである。

 冒頭の「アットホーム」はダントツに優れてはいるが、少し物足りない個所もある。よって「2つ星半★★☆」とした。また「ライフルホームズ」と「メジャーセブン」は、それぞれ「1つ星★」とした。

 その一方で、「ヤフー不動産」は対応能力欠如、「スーモ」は不可解という評価にした。

 なぜ、このような評価になったのか。詳しく説明していこう。

■■■「アットホーム」の新築分譲マンション人気ランキング


<https://www.athome.co.jp/mansion/shinchiku/ranking/>

 アットホーム社が運営する、「アットホーム」の「新築マンションランキング欄」には、驚くことに8種類ものランキングがある。

「人気の新築マンションランキング」、「人気の沿線ランキング」、「ハイグレード・高級マンションランキング」、「タワーマンション・高層マンションランキング」、「総戸数ランキング」、「小規模マンションランキング」、「専有面積ランキング」、「掲載物件数の多い駅ランキング」である。順に見ていこう。

【人気の新築マンションランキング】
 これは、「アットホーム」の新築マンション欄に掲載されている、各物件の詳細ページへのアクセス数(前7日間の合算)をもとに独自集計したランキングで、毎日更新されている。

 内容は「全国」および「首都圏」「近畿」「東海」「北海道・東北」「信越・北陸」「中国・四国」「九州・沖縄」という7地域に分かれ、この7地域はさらに「各都道府県ごと」に分かれている。

 そして、「全国」「7地域」「各都道府県」とも、すべて上位30物件まで掲載されていて、情報量が極めて豊富である(なお、物件数が少ない県は、30物件に満たない場合もある)。

【人気の沿線ランキング】
 これは、主に「全国」および「首都圏」「近畿」「東海」という3地域を対象に、人気の沿線を各10路線ずつ選び、各路線ごとに人気のマンションを3物件ずつピックアップしている。それに加えて、各路線ごとに「新築マンション一覧」をチェックすることもできる。

【ハイグレード・高級マンションランキング】
 これは、新築マンションを最高価格の高い順にランキング化したもので、「全国」「7地域」ごとに、上位30物件まで掲載されている。

【タワーマンション・高層マンションランキング】
 これは、新築タワーマンション・高層マンションをアクセス数順にランキング化したもので、「全国」「7地域」ごとに、上位30物件まで掲載されている。

 なお、ここでは「高層マンション」を20階以上と定義しているため、掲載数が30物件に達しない地域もある。

【総戸数ランキング】
 これは、総戸数の多い新築マンションをアクセス数順にランキング化したもので、「全国」「7地域」ごとに、上位30物件まで掲載されている。

【小規模マンションランキング】
 これは、小規模(50戸以下)な新築マンションを、アクセス順にランキング化したもので、「全国」「7地域」ごとに、上位30物件まで掲載されている。

【専有面積ランキング】
 これは、新築マンションを最大専有面積が広い順にランキング化したもので、「全国」「7地域」ごとに、上位30物件まで掲載されている。

【掲載物件数の多い駅ランキング】
 これは、新築マンションの掲載数が多い駅をランキング化したもので、「全エリア」「東京」「神奈川」「千葉」「埼玉」の各駅ごとに、「上位3物件+α」が掲載されている(「各都道府県ごと」には分かれていない)。このうち「+α(プラス・アルファ)」とは、その駅に例えば15物件が掲載されていたら、「そのすべて」という意味になる。

 以上のように、「アットホーム」の「新築マンションランキング」はまさに“至れり尽くせり”に近い。よって「新築分譲マンション人気ランキング採点表」では、「2つ星半★★☆」を付けた。

■■■「ライフルホームズ」の新築分譲マンション人気ランキング


<https://www.homes.co.jp/mansion/shinchiku/ranking/>

 これは、ライフル社の「ライフルホームズ」新築分譲マンション欄に掲載されている、「デイリーランキング」である。ランキングの順番は各物件へのアクセス数(直前の1週間分)を基準にしていると思われる。

 ランキングは「全国」および「東京」「東京23区」「東京市部」「神奈川」「千葉」「埼玉」「北関東」「北海道・東北」「北陸・甲信越」「東海」「関西」「中国・四国」「九州・沖縄」という13地域に分かれている。

 ただし「全国」では上位10物件が掲載されているものの、「東京」では上位6物件(23区3物件、市部3物件)と数が減り、他の地域はわずかに上位3物件が掲載されているに過ぎない。

 これは「アットホーム」の新築分譲マンションランキングが、「全国」「7地域」ともすべて上位30物件まで掲載している事実と比較すると、かなり見劣りがする。

 また「アットホーム」には8種類ものランキングが掲載されているのに、「ライフルホームズ」はわずか1種類だけである。

 以上の理由により、「新築分譲マンション人気ランキング採点表」では、「アットホーム」の2つ星半★★☆に対して、「ライフルホームズ」は1つ星★と判断した。

■■■「メジャーセブン」の新築分譲マンション人気ランキング


<https://www.major7.net/Ranking/area_1/>

 これはマンション大手7社が参加した「メジャーセブン」に掲載されている人気マンションランキングで、1ヵ月単位で集計したデータを翌月に掲載している。ランキングの順番は、各社の新築分譲マンションへのアクセス数を基準にしていると思われる。

 ランキングは「全国」および「関東」「関西」「北海道・東北」「中部・東海」「中国・四国・九州」という5地域に分かれている。

 そして「全国」「関東」「関西」では上位5物件を掲載、他の地域は上位3物件を掲載というように、物件数が少ないためかなり物足りない。

 その一方では、住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスという、影響力が高い各社の物件という事実に注目しなければならない。

 以上の理由により、「新築分譲マンション人気ランキング採点表」では、「ライフルホームズ」の「1つ星★」と同様に、「メジャーセブン」も「1つ星★」と判定した。

■■■「Yahoo!不動産」の新築分譲マンション人気ランキング


<https://realestate.yahoo.co.jp/new/mansion/top/>

 ヤフージャパン社の「ヤフー不動産」には、数年前まで、新築分譲マンション人気ランキング欄が存在した。しかし、数年前に発生したある「事件」がきっかけになって、ウェブサイトが一気に弱体化してしまい、2018年になっても人気ランキング欄は存在しなかった。

 そのため、「新築分譲マンション人気ランキング採点表」では、「ヤフー不動産」は「対応能力欠如」という判断にした。

 最後はリクルート社の「スーモ」である。2018年版では「スーモ」は不可解とされている。その理由を知りたい人が多いと思われるが、話がとても長くなるため中編で説明する。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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