リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年5月8日

第66回AERAが指摘した「免震超高層への不安」

 朝日新聞社が発行する週刊誌AERAの防災記事が鋭い。最近、ドキッとしたのが、4月2日号の「免震超高層への不安」である。こんなコピーが並ぶ。

 「構造設計者はタワーマンションに住まない」

 「免震ブームが心配だと打ち明ける建築専門家がかなりいる」

 「倒壊の心配までする人もいる」

 その中で、話題になっているのが「アスペクト比」である。

 図1「アスペクト比(3:1)の例」

 アスペクト比とは、「建物の高さ」と「平面の短辺」の比をいう。図1は、アスペクト比が「3:1」の場合である。

 免震建物では、このアスペクトが「3:1」より低い、すなわち「2.5:1」とか「2:1」の方がよい。

 これを、分かりやすくいうと、高さが低くて横幅が大きい、「ずんぐりむっくり」の方が良く、逆に「スレンダー」なものはよくない。

 それでは、アスペクト比が「3:1」より、高い場合にはどうすればいいのか。このときは、低層部を張り出したり、高層部をセットバックしたりして調整する。それが、図2である。

 図2「アスペクト比を低くする工夫」

 図2が意味するのは、なるべく「重心」を低くしなさい、ということである。

 それでは、アスペクトが「3:1」より高く、かつ図2が示す対策を講じていない場合には、どうすればいいか。そのときは、建物が揺れを止める擁壁に衝突しないか、免震装置が引抜力に耐えられるかを、慎重に検討しなければならない。

 このような「基礎知識」の多くは、日本免震構造協会がPDF資料『免震住宅の計画』として公表している。図1、図2もそこから抽出した。

 また、AERA臨時増刊号「震度7を生き残る」も、内容が濃かった。特に身につまされたのが、「防災学者32人アンケート 私はこうして生き延びる」。

 「震度7を生き残ることができますか?」という質問への回答は以下である。

 「分からない」──23人

 「生き残る」──8人

 「生き残らない」──1人

 「分からない」と答えた人の多くが、「その時、どこにいるかによって、生死が分かれる」としている。

 【参考資料】

 日本免震構造協会『免震住宅の計画』

 http://www.jssi.or.jp/menshin/doc/keikaku.pdf

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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