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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2015年10月13日

第190回積水ハウス「御園座マンション」の現場で考えたこと

 野村不動産「プラウドタワー名古屋栄」の敷地から徒歩数分の場所で、積水ハウスが「御園座」を解体して、新御園座と店舗と304戸のタワーマンションに建て替える「栄1丁目御園座共同ビル計画」を進めている。

 最大の売りは建築家で東京大学教授の隈研吾氏が設計監修を手がけたこと。東京銀座の新歌舞伎座ビルと同様に、1階~4階に和風の御園座、5階~40階にマンションを置く。マンションの第1期販売は今冬から来春になると思われる。

 前回述べた「プラウドタワー名古屋栄」の記者発表会に出席した後に、「御園座マンション」の建設現場にも足を伸ばした。すると、このコラムで書いておきたいテーマが、自然に頭に浮かんできた。

 それは、野村不動産および積水ハウスと、リクルート「SUUMO」およびスタイルアクト「住まいサーフィン」の関係である。

 野村不動産は記者発表会で、リクルートの2015年版「愛知県民が選ぶ住みたい街ランキング」と「名古屋市在住者が選ぶランキング」を活用した。

 愛知県民が選ぶ住みたい街ランキング(駅エリア)

 1位 名古屋、2位 星ヶ丘  

 3位 金山、4位 覚王山  

 5位 藤が丘、6位 本山 

 7位 一宮、8位 刈谷 

 9位 千種、10位 栄 

 名古屋市在住者が選ぶランキング(駅エリア)

 1位 覚王山、2位 星ヶ丘

 3位 本山、4位 名古屋 

 5位 金山、6位 藤が丘 

 7位 千種、8位 御器所 

 9位 栄、10位 池下

 愛知県民は1位が名古屋駅エリアで10位が栄駅エリア、名古屋市民は4位が名古屋駅エリアで9位が栄駅エリアになっている。「プラウドタワー名古屋栄」の記者発表会では、野村不動産はそのデータを十二分に活用していた。積水ハウスの「御園座マンション」も同じ栄1丁目に建つので、販売に際してはそのデータを活用すると思われる。

 そこまでは何の違いもないのだが、スタイルアクトが運営する「住まいサーフィン」が発表する諸データを見ると、評価は一変。野村不動産と積水ハウスが分譲したマンションはまさに対極的な関係に置かれる。

 まず「第7回管理会社満足度ランキング2015」によると、マンション入居者の満足度1位は野村不動産パートナーズ、2位は三井不動産レジデンシャルサービス、3位は住友不動産建物サービスである。しかし積水ハウス系の積和トータルサポートの名前は、25位までのランキングには見当たらない。

 また「新築マンションアフター満足度ランキング2015」によると、マンション入居者の満足度1位は野村不動産パートナーズ、2位は三井不動産レジデンシャルサービス、3位は東京建物である。しかし積水ハウスの名前はやはり14位までのランキングには見当たらない。

 野村不動産は堂々の1位であるのに対して、積水ハウスが分譲したマンションに対する入居者の評価はなぜ、「住まいサーフィン」のランキングに現れないのだろう。

 (栄1丁目御園座共同ビルの写真は、積水ハウスのニュースリリースから引用)

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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