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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2021年7月6日

第379回 「不動産DX時代」始まる、東急・三菱・三井がリード

 皆さんは「不動産DX」という言葉を聞いたことがありますか。このうち、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」には、次のような意味があります。

 デジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革する。
 既存の価値観や枠組みを根底から覆すような、革新的なイノベーションをもたらす。

 デジタルトランフォーメンション(DX)の必要性は、さまざまな業界で議論が進んでいます。中でもDXの余地が大きいとされているのが不動産業界です。

【■■】不動産業界におけるDXとは?
 ウェブサイトの「コボット」には、「不動産業界におけるDXとは?──導入のメリットと成功事例」と題する記事が掲載されています。その記事を要約しましょう。

 ◆ DXが不動産業界にもたらすメリット
 不動産業界におけるDXとは、最新のAI技術やITを使って、業務のデジタル化を推進していこうという取り組みです。営業活動をオンラインで行えるようにしたり、物件情報の管理を自動化させたりと、不動産においては非常に多くのデジタル化の余地を残しています。

 ◆業務効率化の実現
 DX化による最大の魅力は、既存の業務の自動化や効率化を進められる点です。物件に関する問い合わせをチャットで気軽に相談することができたり、帳票作成を自動化することで業務負担を削減したりと、多くのメリットを期待できます。

 ◆働き方改革の実現
 業務効率化が進むことで、社員の働き方改革にも結びつけられます。業務の効率化、自動化によって業務負担が小さくなり、残業時間を短くできます。

 URL<https://www.kobot.jp/kobotcolumn/2021/04/24/real-estate-dx>

【■■】不動産各社のDXへの取り組み

 経済産業省は企業のDXに関する自主的取り組みを促すため、2020年11月に「DX認定制度」を創設しました。不動産業界では、次の各社がこの認定制度に合格しています。

 東急不動産ホールディングス(2021年4月1日)
 三菱地所(2021年5月1日)
 三井不動産(2021年6月1日)

【■■】東急不動産ホールディングスのDX

 同社は2021年4月7日、「経済産業省指針に基づくDX認定を取得──総合デベロッパー初の DX 認定事業者に」と題するニュースリリースを発行しました。

 ◆「DX認定制度」認定取得のポイント
 当社は、「東急不動産ホールディングス 2020統合報告書」にて公表の通り、事業のデジタル変革を今後の成長戦略の柱に位置付けております。

 「デジタル活用による業務効率化」「お客さま接点のデジタル化」「デジタルによるビジネスモデル変革」を三位一体で推進し、企業価値の向上を実現していきます。

 従来以上にDX推進に注力すべく本年度より「グループDX推進部」を新設し、社内の集積データの活用や、デジタル技術を活用した全社 横断的なビジネスモデル革新の推進体制を強化してまいります。

 URL<https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/news/pdf/2503>

【■■】三菱地所のDX

 同社は2021年6月8日、2019年「攻めのIT経営銘柄」、2020年「DX銘柄」に続き、2021年は「DX注目企業」に連続選出──、と題するニュースリリースを発行しました。

 三菱地所株式会社はこのほど、経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX注目企業」に選ばれました。両者はこれまで、デジタル技術を前提とした「ビジネスモデル・経営変革」や、「成長・競争力強化」に取り組む企業について、2019 年まで「攻めのIT経営銘柄」として、また、2020年からは「DX銘柄」「DX注目企業」として選定してきました。

 三菱地所は今回、3年連続で選出されたことになります。

 ◆評価対象となった主な取り組み
 ①大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティ化によるデータ利活用型エリアマネジメント
 ②マンション自主管理アプリ・サービスなど住宅事業におけるDX
 ③まちにおける多様なサービスで利用できるデジタル共通IDの整備
 ④社内ベンチャー制度によるデジタルを活用した新事業の創出

 ◆具体的な事例──分譲マンションの自主管理アプリ「KURASEL」
 分譲マンションにおける管理コスト削減や管理組合役員の担い手不足に対応、所有者・居住者情報、管理費請求や未納状況、業者への支払いや発注情報などを一元管理。今後は、管理規約や理事会議事録といった重要書類も格納できるようにする予定。

 URL<https://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec210608_DX2021.pdf>

【■■】三井不動産のDX

 同社は2021年6月8日、「デジタル×コロナ対策企業(レジリエンス部門)」に選定、新型コロナウイルス感染症下の「業務の持続性確保」が評価──、と題するニュースリリースを発行しました。

 三井不動産株式会社は、新型コロナウイルス感染症を踏まえた、デジタル技術利活用による業務持続性の高さが評価され、経済産業省及び東京証券取引所より「デジタル×コロナ対策企業(レジリエンス部門)」に選定されました。

 当社は、グループ長期経営方針「VISION2025」で掲げる「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」の実現に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に積極的に取り組んでいます。

 注力テーマの一つである「働き方改革」では、2016年からICTを活用した生産性・従業員満足度向上に取り組んでおり、2017年から展開している多拠点型シェアオフィス「ワークスタイリング」事業などで、働く場所に捉われない多様な働き方を実践しています。その結果、新型コロナウイルス感染症における最初の緊急事態宣言下でも在宅率9割以上を実現いたしました。

 今回、この様なコロナ禍における柔軟で迅速な在宅勤務への移行・業務の高い持続性が評価され、特別に新設された「デジタル×コロナ対策企業(レジリエンス部門)」での受賞に至りました。

◆評価された取り組み(スムーズにリモートワークに移行できた各種取組)

 ①受発注会計業務の「印鑑レス・ペーパーレス・モバイル化」を実現した、
  フルクラウドでの基幹システム刷新。
 ②全社員個人直通番号・IP電話・モバイル電話帳の導入による、
  代表番号・固定電話使用頻度の大幅削減。
 ③コミュニケーションツール「Teams」の研修および徹底活用
 ④社員居場所表示アプリを導入。
  密状況の把握・感染者が出た場合の追跡等にも活用。
 ⑤全社員カメラ付きモバイルPC貸与。
  希望者にはモバイルWi-Fiも貸し出し実施。

 URL<https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2021/0608_01/>

 【追記】デジタルトランフォーメンション(DX)の提唱者

 「DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)」は、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。

 「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というような意味になります。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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