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「斜め45度」の視点

2011年11月22日

第49回緊急地震速報による「大手柄」

 「緊急地震速報です。○○地域に強い地震が発生する恐れがあります。地震の揺れに備えてください」

 3月11日以降、テレビで流れる緊急地震速報に、「外れ」が多いように感じないだろうか。しかし、東日本大震災に際して、この地震速報のお陰で、走行中の東北新幹線27本が、脱線することなく停止した。よって、その「大手柄」に免じて、予想が外れた場合でも腹を立ててはいけないようだ。

 今年10月中旬、日本地震学会の全国大会特別シンポジウムが静岡市で開かれた。その席上、京都大学防災研究所の山田真澄氏が、「東日本大震災と緊急地震速報」に関する講演を行った。

 大震災の当日、緊急地震速報システムは地震発生を検知し、最初のP波を検知した後、約8秒後に警報を発表した。しかし、警報システムは全体として、十分に機能したとは言えない。これは、破壊が小さい振幅で始まったこと、破壊過程が複雑だったからである。

 このため、システムは当初、地震動や津波高さを過小評価した。また、関東地方には警報を出さなかったのである。

 その一方、東北新幹線に関しては、極めて有効だった。新幹線全体で電線を支える柱が540個所、送電線が470個所、高架を支える構造柱が100個所、軌道(レール)が20個所で損傷したにもかかわらず、走行中の電車27本は無事に停止できたのである。これは、地震速報の賜物なのだから、その効果は大いに称えるべきであろう。

 緊急地震速報は、地震が発生した後、数秒間で、強い揺れの情報を提供システムで、2007年10月から一般市民への提供が始まった。

 山田氏は、「速報システムは、巨大地震に対するアルゴリズムを組み込むことによって、次の大地震(東南海地震、南海地震など)では、もっとうまく動くように改善できる」と指摘している。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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