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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2016年10月4日

第225回名古屋「メガシティテラス」記者発表の雰囲気

 名古屋で最大規模となる総戸数553戸のマンション「メガシティテラス」を取材するため、9月に、地下鉄名城線「茶屋ヶ坂駅」近くのモデルルームを訪ねた。事業者は住友不動産、近鉄不動産、住友商事、東急不動産という、少し風変わりな4社JVである。

 取材の前に、私は必ず、マンションの敷地周辺をグルリとひと回りする。

 茶屋ヶ坂駅から徒歩4分の距離にある敷地は、南北に細長い長方形で、広さは実に2万2千平方メートル。敷地の西側にはホームセンター「コーナン砂田橋店」、東側には「コカ・コーライーストジャパン」のオフィスや流通施設がある。また南側には、8月にオープンしたばかりのスーパーマーケット「コノミヤ砂田橋店」がある。北側にある空き地には、共同住宅の建設計画用地がある。そしてさらに北側には谷田川が流れ、その両岸に緑地が広がっている。

 歩いた距離は約2キロで、かかった時間は約30分。ただし、当日は36~37度の炎天下だったので、熱中症にならないようにペットボトルの水を飲みながら見学した。当日、記者発表に出席した記者やフリーのジャーナリスト諸氏も、似たような感じだったのではないか。

 暑さのため頭がボーッとなった状態でモデルルームの玄関を入ると、住友不動産広報部の若山公一さんから声をかけられた。私が理解する限りでは、若山さんはデベロッパーの広報マンとして、最も長いキャリアを持っている。数年で入れ替わることが多い、デベの広報スタッフの中では異色の存在といっていい。そういう若山さんが来ていることは、事業者としても、かなり力を入れたプロジェクトであるに違いない・・・。

 その予想通りに、記者発表には住友不動産東海支店長の竹田晃氏など、各社の幹部が出席。また配布された資料は充実していたし、CDにはCGデータだけではなくプレゼンデータも入っていた。

 質疑応答の場面では1番目にNHKの記者が、建物の完成時期を質問した。「そんなことは、配布された資料を見れば分かる」と思うかもしれないが、実際には、質問しなければ理解できない。

 開発用地は大きく3ブロックに分かれている。

 ・南側のブロック ─ スーパーマーケット「コノミヤ砂田橋店」。2016年8月にオープン。

 ・中央のブロック ─「メガシティテラス」。1工区に南棟・中央棟の2棟、2工区に北棟の1棟。 

 ・北側のブロック ─「共同住宅」の建設計画用地。

 このうち、メガシティテラスの1工区は2017年11月に竣工予定、2工区は2018年7月に竣工予定となっている。すなわち、少し込み入っているので、確認しなければ分かりにくい。

 2番目に私が質問した。

 Q「4社はなぜJVを組んだのですか?」

 A「この開発用地にはかつて、レンゴーの段ボール工場が立っていました。レンゴーは住友商事と親しいので同社に話があり、次に住友グループの縁で住友不動産にも話がありました。また近鉄不動産と東急不動産は、この土地のポテンシャルに注目していました」(住友不動産の竹田晃支店長)

 Q「デベロッパーの多くは、建物が完成する前に完売することを目標としています。しかし住友不動産だけはそうではなく、建物が完成した後でも販売を続けるスタイルです。この物件ではどんなスケジュールですか?」

 A「建物が完成してから半年経ったくらいの完売を目標にしています」(同)

 Q「他社では、第1期で即日完売すると、販売所長はほめられます。しかし、住友不動産の場合には、即完した販売所長はしかられるそうですが、今回もそうなりますか?」

 A「(苦笑しながら)、それは都市伝説です」(同)

 3番目にマンション評論家の桜井幸雄さんが、資料に記されたマンション管理費について質問した。資料には次のように書いてある。

 ・戸数50戸~31戸──平均管理費は236円/平米

 ・戸数100戸~76戸──196円/平米

 ・戸数200戸~151戸──164円/平米

 ・戸数500戸~301戸──158円/平米

 桜井さんは、「メガシティテラスは共用施設を備え、コンシェルジュサービスを提供し、24時間有人管理を実現ししています。それでも158円くらいですか」と確認し、「そうです」という回答を得た。

 質疑応答の後は、ビデオを見て、模型を見て、モデルルームを見学した。ビデオでは名古屋ドームまで約1.3キロの距離で、その西隣には大型ショッピングセンターのイオンモールがあることも知った。

 私は時間をかけて模型を眺めた後に、担当者に車の動線、自転車の動線、人の動線を確認する。「茶屋ヶ坂」駅からこのマンションまでは徒歩4分だが、マンションの入口から最も遠い住戸は、さらに4分くらい歩くことが分かった。

 当日はテレビ局が取材に来ていた関係で、模型室でもモデルルームでも、どうしてもテレビ局の撮影を優先することになる。書く仕事が中心の記者やフリージャーナリストは、撮影のジャマにならないような個所に立って、眺めたり質問したりした。新たに販売されるマンションの記者発表は、いつもこんな感じで行われている。 (以下、次回)

 【物件概要】

 所在地─愛知県名古屋市東区砂田橋4丁目110-1(地番) 

 交通─名古屋市営地下鉄名城線「茶屋ヶ坂」駅から徒歩4分 

 総戸数─553戸(1工区373戸、2工区180戸) 

 完成─1工区・2017年11月下旬 

    2工区・2018年7月中旬 

 入居予定日─1工区・2018年3月下旬

       2工区・2018年12月中旬  

 敷地面積─2万2001平米 

 建築延床面積─4万7918平米 

 構造・規模─鉄筋コンクリート造・地上10階建  

 用途地域─準工業地域  

 駐車場総台数─553台(平置289台・機械式263台・身障者用1台)

 自転車置場総台数─1106台

 管理会社─住友不動産建物サービス

 売主─住友不動産、近鉄不動産、住友商事、東急不動産

 第1期販売─2016年10月を予定

 設計・施工─長谷工コーポレーション

 特記事項─敷地北側の隣接地には、共同住宅の建築計画がある 

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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