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「斜め45度」の視点

2020年10月13日

第361回 三菱地所・近鉄不「コロナ対策にもなる太陽光発電マンション」にGD賞

 「コロナ禍」の現在、起こってほしくないことの1つは「停電」です。2020年の夏は異常な暑さでした。そのため、仮に停電が発生したとしたら、「エアコン」などがストップして、目も当てられない事態になっていたと思われます。

 それに加えて、停電すると「照明」が消えてしまうし、デスクトップ型の「パソコン」もストップします。これでは、自宅で「テレワーク」を行うことも出来ません。

 停電に備えるためには、どうすればいいのでしょうか。現在、最も有効な方法と見なされているのが、「太陽光発電装置」の導入です。

 そういう視点で注目したいのが、三菱地所レジデンスと近鉄不動産が、2020年11月下旬から販売を予定している、「ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラ」です。


 画像は「ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラ」の完成予想図

【■■】「ZEH-M(ゼッチマンション)Ready」を採用

 ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラは、「ZEH-M(ゼッチマンション)Ready」方式を採用しています。分かりやすく説明してみましょう。

 ①住宅自体の「断熱性」や「省エネ性能」を向上させる。

 ②それに加えて、「太陽光発電装置」を導入しエネルギーを創る。

 ③上記の効果で、年間の「1次エネルギー消費量」を、おおむねゼロ以下にする。

 ④「1次エネルギー」とは、「石油、天然ガス、石炭など、自然由来のエネルギー」を意味する。

 ⑤「1次エネルギー消費量」の対象になるのは、「暖冷房・換気・給湯・照明」で、「テレビや冷蔵庫などの家電製品」は対象外にする。

 この「ZEH(ゼッチ)」は、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称です。

 政府は「エネルギー基本計画」(2014年閣議決定)において、「住宅については、まず2020年までに標準的な新築住宅で、続いて2030年までに新築住宅の平均で、ZEHの実現を目指す」という、政策目標を掲げました。

 ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラは、「その政策目標に従った」、ということになります。

【■■】ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラの特徴


 ◆ザ・パークハウスで初の「ZEH-M(ゼッチマンション)Ready」を採用
  これにより、「暖冷房・換気・給湯・照明」などのエネルギー消費量の「50%削減」を目指します。

  

 ◆新エネルギーマネジメントシステムを構築
  住棟4棟を中心にした「広い屋根」を活用、必要な太陽光発電パネルの設置スペースを確保しました。 またオール電化を採用。通常は深夜電力でお湯を沸かし保温する「エコキュート」を、日中でもお湯が沸かせるよう改良しています。

  これにより太陽光エネルギーを「お湯に変えて蓄熱(蓄エネ)」するシステムが完成。「日中の太陽光発電による電力」を、100%使い切ることができる見込みです。

  それに加えて、一括受電と太陽光発電を組み合わせた、「日本初の電力供給体制」を構築しています。

 ◆住戸の平均専有面積は約96平方メートル・全145タイプ   テレワークを行う時、デスクとして使用できるカウンターを、25%以上の住戸に設置しました。

  また1 階住戸はすべて専用テラス付きです。それに加えて「土間付きの住戸」や「ルーフテラス付きの住戸」などを用意。ライフスタイルに合った、「新しい暮らし方」を提案しています。

【■■】働き方と暮らし方を豊かに彩る「12の共用施設」

 ◆ヴィラハウス(共用棟I)
  ブックカフェ

 ◆アネックスハウス(共用棟II)
  フィットネススタジオ(ジム)、サイクルスペース
  パーティーリビング、ヴィラスイート(ゲストルーム)

 ◆その他
  レンタルスペース、ウィズラウンジ
  キッズルーム、コワーキングラウンジ

 三菱地所レジデンスと近鉄不動産が連名で公表した「ニュースリリース」には、「こんな空間が日本にも出来るのか」と感じさせる魅力的なCGが掲載されています。

「ヴィラハウス完成予想 CG」、「ヴィラパーク・ヴィラプロムナード完成予想 CG」 、「ウィズラウンジ完成予想 CG」 、「ヴィラハウスデッキ完成予想 CG 」などです。


画像は「ヴィラプロムナード完成予想。

【■■2020年度グッドデザイン賞を受賞】

 太陽光でお湯を沸かすZEH-M スキームは、2020年度グッドデザイン(Good Design)賞を受賞しました。受賞理由を説明する「評価コメント」を紹介します──。

 「省エネルギー、創エネルギー」という課題は本来、戸建て住宅よりも、「スケールメリットのある集合住宅」における方が取り組み易いはずである。

 しかし、太陽光発電を導入する場合、従来「1住戸1受電方式」の契約しかなく、太陽光発電を建物全体で運用する新しい仕組みには対応できなかったというのは、大きな足かせとなっていたはずだ。

 「まずはこうした制度の見直しが必要である」という、重要な提言となっているのが本プロジェクトである。

 太陽光発電による電力を、「お湯に変えて蓄エネルギー」をし、その仕組みをマンション一棟で管理する・・・。「出来そうで、出来なかった取り組み」であり、業種を超えた協業によってなし得たプロジェクトとして、高く評価できる。

 

【■■マンションの概要】

 所在地は千葉県浦安市高洲。

 JR京葉線「新浦安駅」から、バスに乗車。13分の距離にある、「高洲海浜公園」バス停で下車。そこから徒歩2分。

 総戸数は528戸。住棟は地上4階建ての「テラスプラザ」「ベイプラザ」「サニープラザ」「カームプラザ」の4棟で構成。

 ほかに、木造1階建の「ヴィラハウス」と、鉄骨2階建ての「アネックスハウス(パーティールーム・ゲストルーム・ジム施設棟)」がある。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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