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「斜め45度」の視点

2013年12月24日

第125回最終的には「シェアハウス条例」が必要(後編)

 一般社団法人日本シェアハウス協会(山本久雄代表理事)は10月19日、住宅新報社の後援を受けて、東京・新宿で「シェアハウス問題」に関する緊急フォーラムを開催した。シェアハウスを運営する約70業者のほか、建設・不動産業界の関係者ら約150人が参加した。

 山本代表理事は、国交省の「シェアハウスは寄宿舎」とする通知によって、「いいシェアハウス」が危機に陥りかねないと指摘。同協会の自主基準を活用することを前提に、「自治体に対して、一律規制を行わないよう要望したい」と述べた。また、シェアハウス全般の理念や運用方針を定めた新法「共生型住宅基本法(通称シェアハウス法)」の制定を目指したいとした。

 日本シェアハウス協会が独自に制定した自主基準の骨子を紹介する。

 一 基本的な考え方

  国交省が示した「寄宿舎仕様への改修」は促進していく。しかし、これは経済的に大きな負担になるため、寄宿舎の対象になっていないUR都市機構の「ハウスシェアリング」を参考に、寄宿舎仕様への改修が必要か否かを協会が判断する。

 UR都市機構の「ハウスシェアリング」は、以下の特徴を持つ。

 (1)入居できるのは、お互いに親族でない人。

 (2)入居可能な人数は、原則として2名。2名以上で入居する場合には、居室の数が上限となる。例えば、4LDKなら4人まで。

 (3)入居後、新たな入居者を追加したり、入居者を別の人と交代できない。ただし、契約中に一部の入居者が、他の入居者を残して退去することは可能。

 (4)契約上の債務は、入居者全員が連帯して負担する。

 二 建築確認申請および既存不適格に関する指針

 (1)新築の場合には規模に関係なく寄宿舎として建築確認を取り、検査済証も取得する。

 (2)築5年以上の戸建住宅で延べ床面積が200平方メートル未満の場合には、寄宿舎への用途変更は無用とする。ただし、間取りを大きく変える場合や200平方メートルを超える場合は、原則として寄宿舎へ用途変更する。

 (3)安全条例で定められた「窓先空地」は、建物の規模が大きく、かつ入居人数も多い共同住宅を対象にしているため、戸建住宅に当てはめることには無理がある。よって、空き寸法などの数値基準ではなく、現実的に安全に避難できる空間が確保されているかどうかを協会の独自基準で判断する。

 三 消防関係

  東京消防庁では2013年5月から、指導基準の対象としてシェアハウスを明記し、共同住宅として指導している。よって、消火器、避難はしご、火災報知器、非常灯などの指導は遵守する。

 四 分譲マンションについて

  分譲マンションの場合には、管理組合や管理会社と事前協議を行い、入居者や管理の「見える化」を行う。

 日本シェアハウス協会の自主基準には、甘い部分がないわけではないが、大筋で共感できる。ただし、各自治体で建築基準法の執行を担当する役人が、国交省の通知に従わない場合、責任を問われかねないのも事実である。よって、より確かな対応策が求められることになる。

 結局のところ、「いいシェアハウス」をつぶさないためには、ワンルームマンション条例を参考に、各自治体がシェアハウス条例を早急に制定する必要があるのではないか。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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