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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2018年11月20日

第302回 「TENSHOCK」から得られる、不動産各社の「従業員満足度」および「生の声」

 このコラムでは前回、「2019年3月の卒業生(現在は大学4年生)が選んだ就職人気企業ランキング」に登場した、不動産各社のプロフィールを説明した記事を「基本編」とすると、今回の記事はその「応用編」に相当する。

 ここでは、就職・転職企業まとめサイト「TENSHOCK」に掲載されたコンテンツの中から、不動産各社の「従業員満足度(ES=Employee Satisfaction)」および「従業員の生の声(口コミ)」をピックアップした。順に見ていこう。

<https://tenshock.biz>

【■■■大手デベロッパーの従業員満足度(ES)】
 売上高1位・三井不動産──ES3.6点
 売上高2位・三菱地所───ES3.9点
 売上高3位・住友不動産──ES2.9点
 売上高4位・東急不動産──ES3.6点
 売上高5位・野村不動産──ES3.2点

 売上高の順位と従業員満足度が比例するとは限らない。ここでは売上高1位の三井不動産がES3.6点、2位の三菱地所が3.9点と逆転している。

〖従業員の生の声〗
 三井不(総務、34歳、男性、年収1036万円)。「地図に残る仕事であり、プロジェクトについてもチーム制がしっかりしているので、仕事はやりやすい」

 三菱地所(財務・会計、20代前半、男性、年収450万円)。「丸の内という世界でも有数の土地を開発できる。仕事の規模は非常に大きく、一人一人の裁量も非常に大きい」。

 住不(カウンターセールス、50代前半、男性、年収1000万円)。「年功序列は全くなく、年齢も関係ない。実力のある社員には、どんどん仕事が任され、結果を出せば、どんどん評価が上がり、年収も上がっていくという、非常に分かりやすい会社です」。

 東急不(用地仕入、28歳、男性、年収784万円)。「温和な雰囲気。良く言えば社員を新入の時点から大人扱いをしていて、いわゆる教育的指導のようなものはほぼ皆無と思われる」。

 野村不(代理店営業、20代前半、男性、年収450万円)。「若いうちから責任感のある仕事をさせてもらえていると思う。現場のメンバーはほとんど20代が中心であり、意見の交換が活発に行われる」。

(※注)各社は売上高順に並べたとしているが、実際問題としてウェブサイト「TENSHOCK」には、各社の売上高は明示されていない。

【■■■新築マンション(首都圏)分譲会社の従業員満足度(ES)】
 売上高1位・東京建物──ES3.6点
 売上高2位・野村不動産──ES3.2点
 売上高3位・住友不動産──ES2.9点
 売上高4位・三井不動産レジデンシャル──ES3.7点
 売上高5位・伊藤忠都市開発──ES3.0点

〖従業員の生の声〗
 東京建物(営業、30代前半、男性、年収700万円)。「総合職の人数が少ないため、一人あたりに求められる業務量が多い。それが大変でもあり、やりがいでもある」。

 野村不(法人営業、20代後半、男性、年収800万)。「31歳で年収が1000万に到達する。また、福利厚生も野村グループの制度を利用でき、充実した内容となっている。7年目から指導職という役職になる」。

 住不(プロパティマネージャー、30代前半、男性、年収1000万円)。「以前は残業が多かったが、現在ではかなり厳しく管理されており、効率のいい仕事を求められるようになった」。

 三井不レジ(営業、20代後半、男性、年収450万円)。「若手から積極的にお客様の前に出ていく仕事で、結果が目に見え、非常にやりがいがある。与えられた仕事以外にも積極性が買われる風土があるため楽しく働ける」。

 伊藤忠都市(企画営業、20代後半、男性、年収700万)。「毎週水曜日はノー残業デー。とはいえ、強制的なものではなく、ノー残業で帰るのが望ましいという程度のもの」。

(※注)首都圏における新築分譲マンションの売上高で、東京建物が1位になっているのは、「年間」の売上高順ではなく、たまたま「ある月」の売上高に注目したためと思われる。

【■■■不動産仲介・購入(マンション)会社の従業員満足度(ES)】
 売上高1位・野村不動産アーバンネット──ES2.9点
 売上高2位・東急リバブル──ES2.7点
 売上高3位・長谷工リアルエステート──ES1.2点
 売上高4位・大成有楽不動産販売──ES2.7点
 売上高5位・三井不動産リアルティ──ES2.9点

〖従業員の生の声〗
 野村不アーバン(代理店営業、30歳、男性、年収608万円)。「有名大学出身者が出世しやすい。財務・経理・人事・企画部門が出世コース」。

 東急リバブル(人事、20代前半、女性、年収280万円)。「住宅手当や基本的な手当がつくので福利厚生は整っていると思う。住宅手当が出ない会社もあるからその点は結構大きい」。

 長谷工リアル─(※注)口コミは掲載されていない。

 大成有楽不販(コンサルティング営業、20代後半、男性、年収520万円)。「専務、営業部門役員は全員親会社からの出向ではなく、プロパー社員からなので夢がある」。

 三井不リアルティ(不動産専門職、30代後半、男性、年収400万円)。「営業の基本的な流れが分かれば、自分自身で決済まで行うことができる。売りから始まり、買い付けをとって、さらに客付まで・・・」。

【■■■分譲マンション(首都圏)管理会社の従業員満足度(ES)】
 売上高1位・野村不動産パートナーズ──ES3.2点
 売上高2位・三井不動産レジデンシャルサービス──ES3.2点
 売上高3位・大和ライフネクスト──ES2.9点
 売上高4位・住友不動産建物サービス──ES2.7点
 売上高5位・長谷工コミュニティ──ES3.0点

〖従業員の生の声〗
 野村不パートナーズ(不動産管理、23歳、男性、年収360万円)。「おそらく標準的な福利厚生だと思う。ただ健康保険組合が野村系ではないのが残念」。

 三井不レジサービス(不動産管理、20代後半、男性、年収350万円)。「会社として残業の削減を掲げており、実際に周囲の人の残業時間も数年前と比較し大幅に削減されたと思う」。

 大和ライフネクスト(不動産管理、50代前半、男性、年収400万円)。「仕事のやりがいについて、研修体制が充実している」。

 住不建物サービス(不動産管理、40代前半、男性、年収500万円)。「中小企業の管理会社から転職した場合、まずビックリするのは、お客さんが管理会社に求めるレベルの高さです」。

 長谷工コミュニティ(法人営業、28歳、男性、年収486万円)。「営業部門の職場の雰囲気は昔からの体育会のノリでした。自分はそういうのが好きだったので、楽しかったです」。

【■■■不動産関連サービス各社の採用方針】
 次に趣向を変えて、不動産関連サービス各社の採用方針を紹介する。
 リクルート住まいカンパニー
 LIFULL(ライフル)
 東京カンテイ

〖■リクルート住まいカンパニー〗<https://tenshock.biz/articles/2509>
 『SUUMO』の運営など住宅に関わるサービスの提供などをしており、リクルートが2012年10月に持株会社となり、新設された子会社である。住宅情報をWebや雑誌で展開する他にも、相談カウンターを設けて物件の紹介なども行っている。

 採用に関する方針は、「既卒業者も就業経験者もOK。30歳以下であれば、誰でも応募可能です」。また「365日通年エントリー。会社を決めるタイミング、エントリーするタイミングを自由に選ぶことができます」。

〖■LIFULL(ライフル)〗<https://tenshock.biz/articles/912>
 1995年創業。住宅・不動産情報ポータルサイト『HOME'S』などの情報サービス事業の企画・運営を行っている。当サイトの総掲載物件数はNo.1を誇る(2017年1月産経メディックス調べ)。2017年4月より会社名をネクストからLIFULLに変更した。

 LIFULLが中期的に目指しているのは、「2025年までに100ヵ国に進出、100社の子会社を設立、100人の経営者を生み出し、世界中の人々の暮らしを変えること。経営陣からのトップダウンやM&Aだけではなく、社員からの事業提案によるボトムアップを中心に事業を多産し、世の中にLIFULLを生み出す企業へと進化していきます」。

〖■東京カンテイ〗<https://tenshock.biz/articles/4041>  東京都品川区に本社を置く、不動産情報専門の会社である。取引相手はメガバンクや全国の金融機関・不動産鑑定会社などで、国内シェア率は約70%。マスコミへの情報提供元として、新聞やNHKなどで1日1度は必ず名前が出てくるほど業界での知名度は高く、32年間黒字経営という磐石な経営基盤を築いている。

採用に際して歓迎する条件は、「システム全体のイメージ構成、要件定義作成の作業能力のある方」「コミュニケーション能力に自信のある方」「研修講師、社内調整等のご経験のある方」。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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