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2021年12月7日

第389回 分譲マンションの機械式駐車場はなぜ消えていくのか???

 大和ハウスグループの分譲マンション総合研究所、「大和ライフネクスト・マンションみらい価値研究所」が今秋、注目すべき報告書をリリースしました。

 報告書のタイトルは、「消えゆく機械式駐車場〜自治体やデベロッパーが考えるべき、今後の駐車場需要〜」。

 機械式駐車場は、なぜ消えていくのでしょうか???

[■■] 機械式駐車場に関する基礎的なデータ

 この報告書には、『機械式駐車場の有無と平面化工事実施数』と題する、興味深いデータが掲載されています。

◆機械式駐車場あり---2039件
 そのうち平面化工事実施数---298件(約14.6%)

◆機械式駐車場なし---1955件

 続いて、「機械式駐車場の平面化工事を実施した、年別マンション数(合計298件)」と題する、印象深いデータが掲載されています。

 2009年-------1件
 2010年-------0件
 2011年-------3件
 2012年-------10件
 2013年-------13件
 2014年-------28件
 2015年-------44件
 2016年-------36件
 2017年-------42件
 2018年-------34件
 2019年-------39件
 2020年-------44件
 2021年3月---4件

 このデータを見ると、「平面化工事」、すなわち「機械式駐車場を解体して、骨材で埋め戻す等により、平置き駐車場にする工事」が、最近では毎年「数十件」ものペースで実施されていることが分かります。

 なお、上記のデータは、大和ライフネクストが管理を受託している「3994管理組合」のうち、「分譲時に機械式駐車場が設置されていた、2039管理組合」にアンケートして得た結果を、年別にまとめたものです。

[■■] 調査の背景--- 「管理組合の財政問題」

 車両保有人口の減少に伴い、「マンションの駐車場の契約者数」も減少傾向にあると言われています。

 契約者が減少すれば、当然ながら駐車場使用料は管理組合に収納されず、「管理組合の財政を圧迫する」ことになります。

 一方、機械式駐車場は月々のメンテナンスコストや、一定年数を経過すると装置の入替えが必要となるなど、「管理組合にとって維持費のかかる設備」です。

 収支改善策の一つとして、機械式駐車場の平面化工事は、特別なケースではなくなってきています。

 また、このレポートでは、「平面化工事の工事時期の傾向や工法」のほか、「総会において平面化工事が否決となった事例を分析」し、その実情を明らかにしています。。

[■■]各種資料の入手先

【マンションみらい価値研究所の報告書「消えゆく機械式駐車場」】
URL<https://www.daiwalifenext.co.jp/miraikachiken/report/Report_028.html>

【機械式駐車場についてお困りの管理組合向け情報】
マンション元気ラボ・コラム 「“金食い虫”、マンションの機械式駐車場をどうする? 」
URL<https://www.daiwalifenext.co.jp/mansion-genkilabo/column/column-20200117.html>

【機械式駐車場にお困りの管理組合様に関するお問い合わせ】
URL<https://www.daiwalifenext.co.jp/contact/sogoconsulting.html>

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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