リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2016年9月13日

第223回「沖式儲かる確率」と「住友不動産」は好相性?

 不動産コンサルタントのスタイルアクト(沖有人社長)は2カ月に1回の割合で、「沖式儲かる確率・上位物件ランキング」を公表する。

 これは、現在販売中の物件の中から、「マンションの資産性の保たれやすさを確率で示した指数」の上位物件を、首都圏エリア別にまとめたもの。

 最近3回のランキングをチェックしてみよう。

 2016年4月に公表したデータでは、首都圏9エリアのうち、住友不動産の4物件が1位に入っている。また23区4エリアに限ると3物件が1位に入っている。まさに「住友不動産強し」である。

 次に2016年6月に公表したデータでは、首都圏9エリアのうち、住友不動産の5物件が1位に入っている。また23区4エリアに限ると3物件が1位に入っている。「住友不動産恐るべし」である。

 そして2016年8月に公表したデータでは、首都圏9エリアのうち、住友不動産の3物件が1位に入っている。また23区4エリアに限ると3物件が1位に入っている。「住友不動産は23区で強し」である。

 沖式儲かる確率では、まず1993年以降に分譲された首都圏1万8000棟のマンションの利回り(沖式利回り)を、以下の式で計算して基本データとする。

 「マンション利回り」=「マンション収益(家賃相当額+売却時損益額)」÷「新築分譲価格」

 そして利回りが2%以上だと資産性が高い、1%台だと平均的、1%未満だと資産性は高くない、と判断する。

 次に、新規に分譲されるマンションの「資産性を構成する要素(最寄駅、総戸数、売主等)」を、過去のデータと比較する。

 そして「資産性を構成する要素」が、資産性が高いと判断された物件にどの程度近いのかを、確率(0%~100%)で表す。

 それにしても、「沖式儲かる確率ランキング」で住友不動産はなぜ、これだけ強いのだろうか。別の表現をすると、「沖式儲かる確率と住友不動産はなぜ、これだけ相性がいいのだろうか。

 私は2015年4月に、住友不動産の販売方法について2編の記事を書いたことがある。

 【分譲マンション七不思議──住友不動産「青田売り+完成売り」の舞台裏(前編)】

 http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20150331/441237/

 【続・分譲マンション七不思議──住友不動産「青田売り+完成売り」の舞台裏(後編)】

 http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/sj/15/150245/040200003/

 その中で、次のようなやり取りをした。

 問 ─ 御社の販売スタイルは独特なため、他社に取材に行ったときにも、よく話題になります。そのとき、「第1期で即日完売すると、普通なら、販売所長はほめられる。しかし、住友不動産ではしかられるらしい」といううわさ話を、何回か耳にしました。これは本当ですか。

 答 ─ しかったケースですか(苦笑)。最近は、価格検証をしっかりやっていますので、即完になるような価格でお売りすることはありません。あったとすると、ずい分前の話になります。その場合にも、しかったというよりは、営業姿勢の確認です。「いい商品を時間をかけてお売りするのが基本なのに、即完だけに気を取られているのは、意識としておかしいぞ」、と──。

 このやり取りをベースにして、次の式を吟味してみたい。

 「マンション利回り」=「マンション収益(家賃相当額+売却時損益額)」÷「新築分譲価格」

 「即完になるような価格で販売しない」ということは、「新築分譲価格が安くはない」ことを意味している。すると、残るのは、「マンション収益(家賃相当額+売却時損益額)が高い」という結論でなければならない。

 すなわち「いい家賃を取りやすいマンション」あるいは「中古価格が下がりにくいマンション」ということだ。いろいろ考えると、「そうかもしれないなぁー」と思えてくる。読者の皆さんは、どう考えるだろうか?

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.