リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2018年3月13日

第277回マーキュリー社が「無料のコンテンツ」にも力を入れる理由

 マーキュリー(Mercury)(http://mcury.jp/)が提供する「有料のコンテンツ」は、主にデベロッパー、マンション販売会社、建設会社、金融機関、広告代理店、シンクタンクなどで働く、「不動産のプロ」に利用されている。

 その典型がリアナビ(Real Net Navi)(http://service.mcury.jp/realnetnavi/)で、「マンションカタログ&価格表」「不動産市況」「エリアポテンシャル」「流通価値算定」「ニュース&トピックス」「リセールプライス」などのコンテンツがある(下図)。


 しかし、マーキュリー社は最近、「無料のコンテンツ」にも注力するようになった。まず「マンションエンジン」 (http://www.manen.jp)がある。





 これは、新築分譲マンションの「相場」を教えてくれる情報サイトで、「地域検索」「路線検索」を利用すれば、誰でも簡単に「自分が検討中のマンションが建つ周辺エリアの相場」を知ることができる。

 例えば、東急目黒線の武蔵小山駅で検索すると、次のようなデータが現れる。



 私はこのうち、「パークシティ武蔵小山ザタワー」の平均価格10,300万円台、平均坪単価470万円台という数字を見て、かなりビックリした。

 このマンションは、2017年11月~12月に第1期(1次・2次)販売を実施。1次で204戸、2次で46戸、合計250戸に対して全戸に申し込みがあった。そして確かに平均価格は1億300万円台、平均坪単価は470万円台だった。

 私は日経産業新聞の「目利きが斬る」というコラムを取材するため、三井不動産の広報部に連絡して、上記の数字を2018年1月19日に入手した。そして、同紙に掲載されたのは2月1日だった。

 しかしながら、この「斜め45度の視点」の原稿を執筆する下作業のために、マーキュリー社の「マンションエンジン」を1月下旬に何の気なしに眺めていたら、すでに上の表が掲載されていた。

 「マーキュリー社が情報を収集する力はなかなかだなぁー」と、改めて認識させられた次第である。

 「無料のコンテンツ」は他にもある。「マンションバリュー」 (https://mansionvalue.jp)は、分譲マンションのオーナー、またはこれからオーナーになろうとする人のためのウェブサイトである。



 そして「がんばるマーキュリー」。(http://ganbaru.mcury.jp/



 これはマーキュリー社のスタッフが執筆したコンテンツで、全体としてユーモア感覚にあふれていて面白い。こういう自己表現の場があれば、スタッフの意欲も高まるに違いない。

 私が興味を持ったのは、2017年7月6日に掲載された「物件名長いよ!ランキングトップ3」(筆者はコッペさん)。

 分譲マンションの名前で最も長いのは次の3物件で、文字数は30文字と説明している。

 「アイリンクタウンいちかわザタワーズウエストプレミアレジデンス」

 「うらわイーストシティヒューマンスクエア東浦和アトレシア壱番館」

 「うらわイーストシティヒューマンスクエア東浦和アトレシア弐番館」

 しかしながら、私の調べでは、最も長い物件の文字数は40文字である。このテーマに関しては、次回に詳しく取り上げたい。

 さて、マーキュリー社の「無料コンテンツ」の中で、最もインパクトがあるのは「Realnetニュース」 (https://news.real-net.jp)である。



 分譲マンションの動向について情報を仕入れるためには、全国紙・専門紙・経済誌の記事、デベロッパーのニュースリリースやプレスリリース、マンションに詳しいメディア(SUUMO、LIFULL HOME'S)が掲載する物件、シンクタンクの見解、国交省の公表資料・・・などを、毎日こまめにフォローする必要がある。

 けれども、「Realnetニュース」はそれを「代行」してくれている。建築&住宅ジャーナリストという仕事を持つ私から見ても、これほど便利なウェブサイトはない。大助かりである。

 さて、本コラム名が「斜め45度の視点」であるからには、ここから45度ひねらなければならない。私の頭の中に浮かんで来たのは、「こういう無料のコンテンツを提供すると、マーキュリー社の経営にどのように影響するのだろうか」という疑問だった。

 アレコレ考えた結果、この疑問を解く鍵になるのは「名は体を表す」ということわざに違いない、と思い至った。

 「goo辞書」によると、社名に採用されたマーキュリーという言葉には、いろいろな意味がある。水星、商業・雄弁・科学の神、道案内人、報道者・・・などなど。

 このうち「道案内人」「報道者」の2項目に注目したい。

 まず道案内人という立場から、「不動産のプロ」に「有料のコンテンツ」を販売して、活動の基盤を構築。その上で報道者という立場から、「不動産に興味を持つすべての人」に「無料のコンテンツ」を提供することにより、一種の社会貢献をしている?

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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